第零回「NEKO」

 

 それほどの偶然と言うわけでも無いが、ちひろの新しい兄の少年は善人の部類に入る人間だった。
 つまり生方幹人(うぶかたみきひと)は通っている近くの中学から自宅に帰ってきて冷蔵庫を開けて牛乳を飲んでいる時にリビングのソファにちょこんと座っている彼女を見つけたのだ。
 最初は猫かと思った。この辺りにはありがちだが、猫屋敷と呼ばれる洋館風のお屋敷があり、たえずその屋敷の周囲には十数匹の猫がうろついており、おそらくその屋敷の人間が餌付けをしている事は間違いないという事だ。ただ、いったいどんな人間が住んでいるのかは生まれてからずっとここで育った幹人も中の人間を見たことは無い。
 と、言うわけでその猫が家の隙間からでも入って来ているのだと思ったのだ。そう思った理由の一つはまずソファの背持たれ越しに猫の耳が見えた事だ。なんだ猫かと思った次の瞬間、その耳がついた小さな黒髪のおさげ頭がひょっこりと起き上がり幹人の方へと振り向いた。人間の女の子で歳は幹人の十歳くらい下みたいだった。つまり四歳くらい。
「にゃん」
 それが幹人が聞いたちひろの第一声だった。

にゃん☆ミ